[D&D4th] パワー源と役割:概説と補足
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D&D4thにおいて、クラスの属性を大枠で規定するのが、パワー源(Power Source)と役割(Role)です。「それがどんな性質のクラスであるのか」「○○という感じのキャラクターをやりたい時どのクラスを当たればよいのか」といったことを説明する際に、この二つのタームは有用な出発点となるでしょう。非エッセンシャル・クラス*をこの二つの情報で整理したのが以下の表です。
(*『ヒーローズ・オブ・ザ・フォールン・ランズ』以降のシリーズをエッセンシャルズ・ラインといい、それ以前のPHB等に収録されている、「普通の」4thクラスを非エッセンシャル・クラスと仮に呼称している)
数の配分的には、役割では撃破役が最も多く、次いで指揮役、そして制御、防衛という風になっています。PHBシリーズに載っておらず知名度が比較的低いであろうと思われるソードメイジ、アーティフィサー、アサシン(本文末尾参照)を除いても、傾向は特に変わりません。
パワー源では秘術が頭一つ抜けているように見えますが、ソードメイジとアーティフィサーを除けば5クラスの信仰・原始、4クラスの武勇・秘術・サイオニックと、平坦化します。この2クラスはキャンペーン世界設定サプリメントに載っているクラスですから、秘術は背景世界の特色を表現するのに使いやすい、という風に言えるかもしれません。D&Dは剣と魔法のファンタジーRPG、ということ? 武勇には制御役クラスがありませんが、古典的な意味で、戦士と魔法使いとの間の壁が現れているということでしょうか。エッセンシャルクラスでは一応、レンジャー(ハンター)という武勇制御役が追加されています(『Heroes of the Forgotten Kingdoms』所載)。
さて、本ブログでは以前にもD&D4thの「役割」を説明する記事を載せたことがありましたが、ここでまた概説しなおしてみたいと思います。どのクラスでも、各役割のイメージそのままでないようなことはやれるものですが、その上で各役割の基本イメージを保証するところのクラス能力、という視点を強調します。パワー源についてもざっと。
■パワー源
◆武勇(Martial)
年月を経て営々と鍛え上げられた筋力、身のこなし、不屈の胆力をその力の源にするのが武勇クラスである。武勇クラスのパワーは「武技」と呼ばれる。
◆秘術(Arcane)
世界に遍在し、澄み渡っている力――魔力を操るのが秘術クラスである。ある者は知恵を尽くし研究と学習で得た技法によって、ある者はその血に流れる竜や悪魔の血脈、またそれら力ある者との契約を媒介にして、世界を操作する。秘術クラスのパワーは「呪文」と呼ばれる。
◆信仰(Divine)
外方次元界、天上世界やあるいはその逆たる地獄の奥底に座す、大いなる存在――神々へと帰依し、祭儀によって結びつき、神々の力の末端としてそれをこの世界に顕すのが信仰クラスである。信仰クラスのパワーは「祈祷」と呼ばれる。
◆原始(Primal)
この世界に遍在し、自然な世界の有様を支える守護者――精霊たちの力を借り、また彼らを助け、自然の秩序と生命の営みのために協働するのが原始クラスである。原始クラスのパワーは「招力」と呼ばれる。
◆サイオニック(Psionic)
内に眠る精神を開花させ、魂の力を爆発させる――この力でもって、己が意志した可能性を現実世界(それは環境かもしれないし、敵か味方か、あるいは自分自身の身体かもしれない)に押し付ける。それがサイオニッククラスである。サイオニッククラスのパワーは「技法」と呼ばれる。
◆影(Shadow、仮訳)
死者の赴く場所、死霊の歩む世界、シャドウフェル。この暗き闇の世界から力を引き出すのが影クラスである。影クラスのパワーは「呪詛(Hex、仮訳)」と呼ばれる。
■役割
◆防衛役(Defender)
●クラス共通能力
マーク、マーク付随能力
●解説
「ヤツを無視すると痛い目にあう!」と思わせるのが仕事。いわゆる「前衛」。
総じて耐久性能が高く、「敵の攻撃を自分に引き付け、自分より柔らかい(耐久性能が低い)仲間に攻撃がいかないようにする」役割。これを保証するために、防衛役クラスは「自分以外に攻撃すると不利なことが起きる」効果を敵に与える能力を共通して持っている。
基本能力はまず「マーク」であり、クラスごとに定められた方法で敵にマークを付与すると、その敵が「その防衛役を対象に含まない攻撃をすると命中ー2」、つまり仲間に対する敵の攻撃を10%命中率を下げることができる。またこの他に「敵がマークを無視して行動する」と発動して、敵に迷惑な効果が起きるような能力を各クラス備えている。その具体的内容はクラスごとに様々。例として、ファイターならば、「敵に攻撃を試みた時点で目標にマークを与える能力(攻撃が外れてもマークはかかる)」と、「マークを与えた目標が自分から離れようとした際(機会攻撃とは別に)攻撃を加えたり、またそのような攻撃が当たったら移動を中断させる」というような能力を所持している。
パーティの盾であり、屋台骨。防衛役にとって傷は勲章である。戦闘が終わった時点で味方は無傷、自分だけが負傷している、というようなことがあれば、まさにその役割を完全に果たせたのだ。喜ぼう。そのためにも、敵と、味方の位置取りをよく把握しよう。防衛役が、マップ上でどこが戦場になるかを決め、それを実現させるのだ。
◆撃破役(Striker)
●クラス共通能力
追加ダメージ能力(、追加ダメージ条件付与能力)
●解説
「敵に確実に傷を負わせる」「厄介な敵を速やかに倒す」のが仕事。
高いダメージをたたき出し、厄介な敵をできるだけ早く倒そうという役割で、これを保証するために「特定条件を満たした攻撃に対して追加でダメージが発生する」能力を共通して持っている。なお、あくまでも「単体に与えるダメージ」が高くなる役割であって、「敵全体に蓄積させたダメージ総量」が高いわけでは必ずしもない。
追加ダメージの条件はクラスごとに様々であり、例えばローグなら「戦術的優位を得ている敵に攻撃する」が条件であり、遭遇の最初のターンで、未行動の敵に対して優位を得る能力を持っていたりする。またレンジャーなら、「狩人の獲物」というパワーを使って特定の敵を指定し、その敵に攻撃したら追加ダメージが発生する――といった具合である。
戦闘には、敵のリーダーやその参謀役といった、重要目標だったり生かしておいたら厄介なことをしてきそうな敵、というのがいるものだ。撃破役というのはそういった敵方の要を落とす、パーティの剣である。その実力を発揮できるように、つまり適切な敵に攻撃が届くよう、追加ダメージの条件が成立するよう、常に味方に連携してもらい、有利な条件を整えよう。
◆指揮役(Leader)
●クラス共通能力
回復能力
●解説
「味方に働き掛けて、パーティを支える」のが仕事。
回復能力を共通して持っており、その他味方を支援する能力・パワーが備わっている。古典的なゲームにおいて「僧侶」「神官」「白魔法使い」が担っていたような機能を担う役割であり、アメリカでは専業ヒーラーみたいな役割が忌避されるらしく、回復も支援も敵を攻撃しながら行うようになっている。味方を強化するようなパワーも結局は敵に攻撃を命中させることで発動する、といった仕組みだったりするので、最前線から中衛といった位置取りをすることが多い。
共通した回復能力は、どれもマイナーアクション(=攻撃のための標準アクションと競合しない)で目標に回復力を使わせ、目標当人の回復力の回復量に、指揮役クラスごとに異なった追加回復量を加えただけのHPを回復する、という風になっている。この他、汎用パワーにも回復パワーが多く、また攻撃パワーでも攻撃が命中したら近場の仲間を回復させる、といったパワーがよく見られる。
回復をする以外では、クラスによって担う機能が大分異なる。例えばウォーロードなら自分のアクションで仲間に攻撃させたり、クレリックなら制御役のように状態異常を撒いたり、といった風に。攻防の機軸となる防衛役や撃破役の活動から一歩離れ、常に戦場を見回して、自分にできることが何かを見逃さないようにしよう。そして無論、指揮役が持っている回復の力というのも限られているのだから、それを最大限効率的に使用するために、味方の耐久力をよく把握しておこう。
◆制御役(Controller)
●クラス共通能力
なし
●解説
「敵に働きかけてパーティの優位を作り出す」のが仕事。
クラスに共通した能力というのはないが、パワーの性質傾向によって役割が形作られている。指揮役が味方に働き掛けるならば、制御役は敵に働き掛ける。状態異常、強制移動、範囲攻撃、地形効果といった力が備わっており、その役割を総括するならば「戦場を操作する」「制御する」といった風になるだろう。敵を眩惑して動けなくする、無理矢理動かして防衛役の隣に連れて行く、広範囲に攻撃を加えて散らばる雑魚を掃討する、入ったらダメージを受ける空間を作り出して空間を遮断する……防衛役が戦場の真ん中にいるとすれば、制御役はその戦場に手を加え、周囲をかため、あるいはそこに収まらないものを掃除するのである。
多彩なパワーで様々なことができる役割だ。戦場全体を俯瞰し、どこに手を加えればいいか常に観察しよう。
■概説以上の機能
こんなとこでしょうか。とはいえ、冒頭でも述べたように、結局のところどのクラスも上の概説以上のこと、他の役割のような機能も果たすことができるものです。どうせですので、ホビージャパンのD&D公式サイトに田中としひさ氏が連載しているD&Dまんが『即大休憩』からいい例示になる回を挙げてみたいと思います。
→ 『即大休憩』遭遇5
パラディンはPHB1のクラスでも相当にマルチアビリティなクラスと言えます。基本は防衛役ですが、レイ・オン・ハンドを強化したり、回復効果を有無パワーを重点取得する方向に動けば指揮役の枠を埋めると主張できるようになったりするかもしれませんし、また上のまんがにあるように、そういった機能を捨てて一撃必殺を目指すこともできます。
こういったマルチアビリティ性を指示するために、PHB2からは「2次的な役割」というのがクラスの解説に付与されるようになっています。2次的な役割が指定されている15クラスの中で、2次的な役割として制御役は9回、撃破役は7回、防衛役は5回、指揮役は3回登場し、大分の偏りを見せています。
この内2次的指揮役が割り振られているインヴォーカーやドルイドは、パワーを見ていると「どちらかと言えば制御役では……」とか思ったりするわけですけれど(いずれも2次的役割として「指揮・撃破」が振られている)、召喚能力によって味方を増やす機能があるのが指揮役という評価につながっているのかな、と思いました。
ところで「プレイヤー人数が少ない時は、制御役の優先順位は低く見積もって、どれかの役割を外すなら制御役に」などと言われたりするのですが、これは上の「2次的な役割」で制御役が多く登場しているのと裏表の関係を成していると言えましょう。制御役はクラスの特殊能力などに紐付けられないと上の概説で述べましたが、状態異常、強制移動、範囲攻撃……こういった効果を持つというだけのパワーなら、探せばどのクラスにでも散見されたりするのですね。ですから、他の役割のキャラクターがそういった能力を少しずつ取得しておけば、制御能はパーティに備わっている……と言えなくもないわけです。
→ 参考:『即大休憩』遭遇1(特に後編)
とはいえもちろん、制御役のクラスがそういった寄せ集めで価値を失うわけではありません!それはウィザード好きとして強調しておきたいと思いますw あくまでも「どれかを切らなくてはいけないなら」という話ですからね。個人的には撃破役を切ってもいいのではとか……w 2次的な役割に撃破役が多く登場するのも、結局は「要は高いダメージディールを出せればいいんでしょ」というのが多くのクラスで効くからでもあるわけですしね。ダメージを出すだけならどのクラスにでもできますから、能力のユニーク性は薄いわけです。
■役割機能の応用/邪道
指揮役や防衛役はその固有能力のユニーク性が高いわけですが、特に防衛役をやっていて釈然としないタイミングがあったりします。敵を引き付ければ引き付けるほど、まあ役割の機能は成功しているわけですが、それが成功するほどに、各クラスの固有能力であるマーク付随能力は実際に使われないわけですw 抑止力は実際に使われないのが肝というのは確かにそうなのですが、いささか寂しい感は否めませんね。それに実際に使われない可能性を考えると、「その抑止力=マーク付随能力を強化する特技」を取得するインセンティブが上がらなかったりして、また寂しいw
そこで、「敢えて敵に防衛役以外を攻撃させて、防衛役の能力を発動する」という戦術が生まれたりするわけです。『即大休憩』からその古典的な例に登場してもらいましょう。
→ 『即大休憩』遭遇6(特に後編)
特にといいますか、後編を見て下さい。ここではパラディンがディヴァイン・チャレンジを発動させていますが、他に、味方が敵に機会攻撃を誘発させ、その敵にファイターが制裁攻撃を発動する、というのが基本パターンと言えます。
このまんが上では「撃破役の回復能力がなくなった」というようなタイミングで使われていますが、別に撃破役でなくとも、防衛役の耐久力も別に無限ではないわけです。そして撃破役が遠隔攻撃主体だったりする場合、防衛役が疲弊して回復も心もとなくなっているというような時にまだ撃破役は無傷で元気がありあまっているみたいなことが起きていたりします。これは必ずしもパーティ全体の耐久力を有効に活用できているとは言えません。「余裕のある後衛のHPを引き換えにして、敵により多くのダメージを与える」戦術が有利な場面もあったりするわけです。
……とはいえ、このような戦術が邪道であるのは確かです。防衛役という触れ込みキャラクターを作って、「敵から敢えて離れることで味方に攻撃が行きやすくし、自分がクラス能力による攻撃を多く狙っていく」というような、実質撃破役みたいなプレイをするのは、同じ卓のプレイヤーたちに対する裏切りと言われても仕方のないことです。先述の古典的先述などはもとより相手の同意を得なければ成立しないものですが、これに限らず、「満たすべき役割」の基本的責務――先に概説したような――を外すプレイを考えているならば、あらかじめ仲間たちと相談し、コンセンサスを作ることが重要だと言えます。
■補足
最後に、冒頭でも書いたように知名度が低そうなクラスについて補足しておくと、まず「ソードメイジ」は『フォーゴトンレルム・プレイヤーズガイド』所載、「アーティフィサー」は『エベロン・プレイヤーズガイド』所載、そして「アサシン」はドラゴン・マガジン誌#379所載になります。
アサシンはもちろん未訳ですが、『Heroes of Shadow』が翻訳される時が来れば、多分そこで補録されるんじゃないでしょうか(無保証)。同書ではパワー源が影のクラスとして「ヴァンパイア」と「アサシン(エクゼキューショナー)」の二つが追加されています。
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コメント
>>アメリカでは専業ヒーラーみたいな役割が忌避されるらしく
それは、今の日本ゲームでも同じですね、
専業ヒーラーは最近ではFFTAのような、
大量のユニットを使う戦略ゲーでしか見たことがないです。
もちろん「本当に純粋にヒールしかできない」は相当なニッチで、大抵は他者を補助する機能が一緒になっていて、そういうのを含めてヒーラーというだろうわけですが、さておき、プレイヤーと対応するのが何か、ということが問題になるでしょう。複数ユニットを扱うゲームだと「それアイテムと何が違うの」という話になりますし、ユニット数が多くなるほどにアイテムと同じでよくなりますからね。で、PLとPCが一対一対応するとして、一人プレイゲームだったら「誰を補助するのそれ」で終わると。
さておき、パーティの中でメインに補助役をやるというプレイには「パーティ内部のリソースを管理する」という快楽構造があるらしくて、(T)RPGやD&DのMMORPGであるDDOでも専業ヒールが好きという層は結構いるように(これまでの経験からは)思われました。そこに「味方への補助効果も回復効果も、敵に攻撃を与えることで発揮される*」というクレリックが現れたのでなるほど、と思った次第です。
ああ、あと、DDOをアメリカサーバーで遊んでいた際の経験から、明らかにヒーラーの水準が日本サーバーより低かったな、と感じたというのもあります。
*もちろん攻撃を当てなくても発動される能力はあるが、基本的に、普通に攻撃を行うことの脇で(別のアクションで)行う
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