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言語における高等語彙について雑考 

 twitter上で、人工言語における新語彙、特に学術用語とかの創造という話題を見かけて、そこから色々連想が飛んだ。

 リアルで使われている人工言語と言えば、現代ヘブライ語である(言い過ぎかもしれないが気にしないぜ)。シオニズムの時代背景と言えばイギリス帝国華やかりし頃、やっぱ現代ヘブライ語の高等語彙に、英語からの借用語が結構入ってたりするのかしら、とか思って、とりあえずググってみた。

 → Wikipedia - エリエゼル・ベン・イェフダー - 業績 - 古い語彙の発掘と新しい語彙の創造

 今まで知らなかったのだが、エリエゼル・ベン・イェフダーという人物が、現代ヘブライ語の大成者らしい。割と、借用語ではよりも造語(古語に遠い意味を与えて再利用することを含む)なさってらっさる。これは本気だ。


 そんな感じでちょっと散漫にtwitterでポストしたわけだが、その時のログをブログに保存がてらまとまった文章にしよう、と思ったら以下のような感じになった。本記事に散漫なところがあるとすれば、散漫な発言をまとめたところを基本としていて、ふくらませ&体系化が足りないせいだろうが、まあそこはご寛恕ください。



 高等語彙というやつについて言うと、「翻訳された言葉は何やら重々しく特殊な用語であるように聞こえるが、実は翻訳される前の言葉は、何のことはないただの日常用語、またはその複合形、延長上の抽象形だった」というのは割とよくある話である。学術用語とかだと露骨に出ることがあったりして分かりやすい。何か例を挙げてみよう。

 最尤法というのがあるのだが、以前twitter上で「読み方教えて」みたいなポストが伝言ゲーム式に広がってきたことがあった。統計用語なのだが、おそらく知らない人間には「中国の昔の法律か何か?」とかそんな感じに思われたのではないかと想像する。これの原語は英語で、「method of maximum likelihood」である。読み方分からないよとか言われる「最尤法」に比べて、英語として非常に基礎的な表現だ。乱暴に置き換えれば「できる限りそれっぽくやる方法」とかなるかもしれない。

 言い換えると最も尤(もっと)もらしい方法……となるが、まあ乱暴なので言い直すと、「最大の尤(もっと)もらしさを出す方法」。これが最尤法である。「尤(もっと)もらしさ」では格好が付かない、もとい使いにくいので、この尤(もっと)もらしさを尤度(ゆうど)と言う。何も知らずに尤度とだけ聞かれたら、もう想像もつかないだろう。


 さて、高等語彙というのは基本、

 A:基本語彙の組み合わせ
 B:異言語で発達した語彙をそのまま持ってくる

から成り立っていて、文化を発達させたある言語がAしてきたのを、周辺の文化がBするというのが基本パターンとなる。上の最尤法の例は、「そのまま」というのには反しているが、産業革命後に近代学問を発展させていった英語がAしたのを、後進帝国主義国家の言語であった日本語がBしたという風になる。まあいきなりだが例が悪く(語彙概念を濫用してるしね)、「そのまま」でなくなっている。これには後にまた触れるとしよう。

 今はとりあえず、英単語で「これはギリシア語とかラテン語から来てるんですよ」と言われた言葉がやけに多かったな、程度のことを思い出してもらえればいい。実際、英語だけではない、それはヨーロッパの言語に広範に当てはまる特長だ。ローマ帝国とカトリック教会、の文化の恩恵に蛮族たちが浴した結果である。


 ところで、そんな基本パターンはあれど、時々後進文化だけど頑張ってAしてるんだぜ、という連中が現れたりする。






 例えばドイツ語。ドイツ語は既存名詞を組み合わせて新しい複合名詞を作りまくる習性というか情熱というか柔軟性というかに溢れているのだが、周辺の言語がギリシア語・ラテン語の形をそのまま継承してたりするところを、自分たちの基礎語彙の抽象形に置き換えたりすることがあった。例えば理性という言葉だが、ゲルマン語同根である英語ではreasonとかrationality、あと知性と訳されることの多く、哲学では特に悟性として理性と分けられることもあるintellectなどが当てはまる。前2つはいずれもラテン語のratio(計算、熟慮といった意味合い)を俗ラテン語→ロマンス語→フランス語という流れで継承し、後者もラテン語intellectus(洞察、理解といった意味合い)を同じ流れで受け継いでいる。

 一方ドイツ語だが、やはりラテン語の語彙は受け継いでいて、そのものずばりratioや、Intelligenzという語彙を持っている。だがむしろ、Vernunftという名詞の方が強い。これはひどく基礎的な語彙――今の英語で言うtakeに当たる言葉、nehmenに根がある。かいつまんで言えば(現代語で言うところの)知覚することを表すvernehmenの名詞形であり、古高地ドイツ語ではfirnunft(知覚や分別、どっちかと言えば悟性)。かのルターがこれをratioの訳語として採用したのでその後のドイツ語思弁において理性として使われてきた。


 まあ、ルターがわざわざ土着の言葉にできる限り置き換えるぜ、とやったように、こういう現象は「ドイツ語」を作るぜうおおおおおという運動の結果でもあるんだろうけど、最初に挙げた現代ヘブライ語でも同じことが言えるんだと思うのである。まあ、
עמונות(amonut, 「民主主義」、現在は דמוקרטיה, demokratiyah)
の辺りには、流石に時代が進んで情報量が増大していくと、やっぱりそればっかりではやっていけないよなぁ残念でした!というのが見えるわけだが、エリエゼルさんに悪いのであまり言わないようにしよう。

 他の類例としてはこれまた現代の共和国トルコ語などが挙げられるだろう。二十世紀初頭、オスマン帝国に葬式を出して小アジアにトルコ共和国が打ち立てられたわけだが、ケマル・アタチュルクの下、この国は非イスラム化・非アラブ化を国是として建国を進めていった。その一環としてアラビア語由来の語彙・語法を廃して「純粋なトルコ語」を制定しようとしたわけなんだけれど、如何せん、もともとトルコ人というのはただの千年前に東アジアから流れてきた遊牧民でしかないので、難しく抽象的な語彙なんかある筈がないし、文化的なことも全部アラビア語やペルシア語でやってきた(まあこんなことは当時の人間も上から下まで言っていたことなんだけど)。とは言えそれでも基礎語彙の複合語への置換が頑張って漸進的に進められつつ、今に至っているわけだ。






 ところで日本語だが、概括的に見るともちろんBタイプである。先程挙げた最尤法の話だが、「そのまま」持ってきてるわけではないので微妙な表現になった。日本語は特殊なので、正直あまり基本パターンで取り扱うのに適していないのであった。昔受け入れた漢語を高等語彙として運用し、その組み合わせとして新規の漢語を生み出しているわけだから、二重の構造になっていると言えるだろう。今まで挙げた他の例ではトルコ語(の言語浄化運動以前)が一番近いだろうが、漢語を語彙のみならず広範囲に取り込んで己のものとしている点が異なる。

 西欧諸言語などから高級語彙を取り込んで、対応語を新しく生み出す時も漢語で作っている程なわけだが、「もっとももっともらしいやりかた」みたいな日常表現を基本に据えて考えると、二重のBが行われていると言えるし、取り込んだのを独自運用しているのだからAが行われている、と言うこともできる。重層性という点で非常に面白いことになっている。トルコ語の場合と違って、現代に至るまでにいわゆるやまとことばも漢語と連携して発展してきたというのが大きい。3種類(ラテンアルファベットを入れれば4種類)の文字体系を日常的に併用する日本語はかなり特殊で、非母語話者は苦労するところだろう。まあこの点、漢字廃止運動を実行に移した韓国がトルコの類例としては適していると言える。


 このような日本語の様態の類例はなかなかないように思われるが、あり得そうな例を一つ思いつきで述べておきたい。アッカド語話者がエジプト語辺りを翻訳するのにシュメール語彙のコンビネーションで置き換えたりする例とかあったりしないだろうか。

 バビロニア・アッシリアの主体であったアッカド語話者は、先行するシュメールの文明とほぼ同化し、文化を受け継いでいたのだが、実際のところ言語系統も異なるし、その楔形文字はアッカド語には不向きだった。彼らは楔形文字をそのまま使用したわけだが、なんと漢字のように標語文字(音素音素でなく一定の音節と、引いては対応する意味を同時に表す)的であったそれを、用法を工夫して同時に表音文字としても使い出したのである。としても、というのがキモで、例えるならば、万葉集とかで、漢字に漢字の万葉仮名で送り仮名とか振っているアレだ。

 まあそんなわけで、別系統の大文明であったエジプト語を訳す時に、意味ベースで置き換えて、シュメールの表意の楔形文字を組み合わせ、それをアッカド語で読んだという例があれば、大分日本の用法に近くなる。アッシリア辺りの粘土板にそんな記述ないかなぁ。不勉強だから知らないけど、ロマンがそそられる。






 さて、そんな感じにロマンがそそられたところでキーを離れておきたい。お然らば。
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laevaと名乗っていましたが、呼ばれる際に恥ずかしいという問題が発覚して以来、にるば(nirva)と名乗ってます。RPG、ボードゲームなどが趣味。
 
 コメントへの返信が大体遅れておりまして失礼しておりますが、おそらく質問等は、twitterの方でしていただいた方が短時間で認知できる確実性が高いかと思います(右カラム参照)。

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