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[アメリカの英雄像と弓] 2:都市民と遊牧民の弓術 

2.都市民と遊牧民の弓術


 都市文化において、ほとんどの人間にとって狩猟は身近な行為ではなく、これは弓術の階層分化を生み出す。専門軍人の「武芸」の一つとしての弓と、兵卒の弱弓とに。一方、遊牧文化では弓は万人の基礎教養であり、誰もがかなりの程度で弓を使えるわけである。弓の達人、英雄の射手と言えば、第一には命中率の高さが条件に挙げられるのはもちろんだが、第二にもてはやされるものが両者で異なってくるのではなかろうか。


○ 都市民の弓術と英雄

 前近代の都市の心性においては先に述べた通り、武技の水準が階層分化しており、そこにおける英雄像とは大衆=兵卒に抜きん出た、選良たる偉丈夫・英雄豪傑というものになる。そしてそこにおける弓とは「余人にはとうてい引けないような剛弓」であり、これをギリギリと引き絞り、対手が鎧で身を固めあるいは壁で体を守っても、それを貫き通してしまうような光景が華になる。

 この手の「凡人にはとても扱えない武器」の話は、三国志などでおなじみだろう。宋の岳飛など、二十歳にならぬ内に三百斤(180kg)の大弓を引いたという伝説が残っている(現代の弓術、弓道やアーチェリーでの弓の重さは20kg程度か、それより軽い程度が普通だろう)。我が国では武士の代名詞に「弓取り」がある程だが、武家の歴史の中でも豪傑として名高い源為朝など、長さ八尺五寸(2.5m程度)もある、5人あるいは8人がかりでなくては弦を張れない剛弓を使っていたという。


○ 遊牧民の弓術と英雄

 一方、狩猟文化に馴染みが深い遊牧民においては、様相が大分異なる。軽装で石壁もあまり用いないところで、英雄一人にしか引けない剛弓など何の意味があるだろうか。それに、常識的範囲での剛弓がそれなりに一般的(特異的英雄的なものでなく)ということもある。例えば13世紀にローマの使節としてモンゴルへ旅をした修道士プラノ・カルピニは、彼らの弓について「弦の引く重さは166ポンド(75kg程度)余りで、その有効射程は2,300ヤード(180~270m程度)に達した」と伝えている。

 またそもそも、彼らは弓自体にも改良強化を加えており、常識外れに重厚長大化した剛弓など使わずとも、名高い合成弓(コンポジットボウ)で強力な矢を放てたのである。

 結局のところ、遊牧民の戦いにおいては、豪傑的体格よりも、機敏さが評価されるように思われる。騎馬遊牧民の馬術と弓術を組み合わせた機動戦法が都市文明の民族を苦しめたことは古来、各地の史書に記されており、例えばヨーロッパの言語には、慣用句として「パルティアン・ショット」が残っているほどである。最初の騎馬遊牧民として名高いスキタイ人から先述のモンゴル軍まで、彼らはいずれも極力近接戦闘を避けて、動き回りながら矢を浴びせる戦術を取ったことで知られている。

 このような環境において、英雄たるの要件は疾さ鋭さ果断さ、敵対手からは卑怯や残酷と称される、という風になるだろう。弓も、剛力の一発よりも速射である。他を圧する体格などは、馬を潰すマイナスの要素とすらなりかねない。


○ まとめとしてのモデライズ

 定住/都市文化の英雄射手は、平民から体格的に抜きん出た偉丈夫だったりして、その体格にも相応しい長大なる余人にとても引けないような剛弓を使う。一方、遊牧文化の英雄射手は、体格は普通で、むしろ速さ機敏さが重んじられる。

 余談ながら、両者における武器の発展模様はこのモデルに親和的なようにも思われる。前者においては弩やクロスボウが発達し、機械を使って人力で引けない強さで弦を張るようになり、また武器自体も大きく重くなっていった。その一方で、後者においてはコンパクトな大きさを維持した合成弓が発達したのである。矢は重くすれば威力が上がるものだが、この弓のために使われた矢はむしろ小さく軽めなものであったという。


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