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[800字コラム] へうげもの「利休切腹」 

 へうげもの、それはまさに永劫回帰せる神話であり、然してただの円環でなく、確と前進する英雄叙事詩である。

 作者は物語の開始より主題の反復と対比を繰り返し、驚嘆すべき構成力を示してきた。へうげ第一部の締めと言うべきこの「利休切腹」において、この回帰する主題達は見事に完結を迎える。その主題とは例えば武と数寄、務めと己の対峙であり、そして(師)父と(弟)子の対峙、父殺し、また父子の継承であり……そして愛であり、また、タイトルである「へうげ」、笑いそのものでもある。

 腹心に輪切りにされながら、愛と赦しを与えた信長――その愛は非情の策謀家たる秀吉を殺し、愛を渇望して得られぬ畜生道に堕とした。鳴かぬ香炉に、己を敢えて危険に晒す腹心。秀吉が織部に利休の介錯を求めるあの場面――織部に「命令」ではなく「頼み」を告げるあの場面ほどに、秀吉の孤独が表れた場所はないだろう。

 一方、愛弟子に首を切られるという時に、利休もまた弟子に愛を、鼓舞を与える。だが秀吉を殺した信長の愛と異なり、利休の愛は織部を生かすのである。かつて織部が、友を失った信長を、敗れ果てた光秀を、そして死を見据えた利休自身を癒した「笑い」。それを以て、利休は刀を振り上げて苦しむ織部に救いと最後の示唆とを与えたのだ。ダール・イ・レゼベールがここにある。

 この二話を通して「武と数寄」の対立も昇華される。秀吉の前で(できぬ!)と苦悶した織部だが、実際にその言葉は放たれなかった。信長殺しの告白場面と異なり、命令と恫喝でことは動かなかった。織部を動かしたものは忠興との、そして孤独な秀吉が求める友情だったのだ。そして真実の自分を見出してより、この二項対立は本質的なものではなくなっていく。

 主人公が武と数寄に悩み、己の何たるが分からず迷走した第一部はこの第九十二席を以て完結する。彼は晴れて「へうげもの」となり――そしてここから、織部の本当の物語が始まるのだ。



 最近、内輪で800字コラムというのをやってます。やってると言っても、まだ2回目なのですが。今回は私がお題の係りだったのですが、山田芳裕『へうげもの』から「利休切腹」をお題に設定してみました。

 自分がお題担当の割にはロクに時間をかけることもできなかった(多分二時間くらい)とか色々言い訳はあるのですが、結局提出したのがこれである以上はこれで開き直って胸を張るしかないわけです(と言いつつ、微修正は加えましたがw)。まあともあれ、カレンダーの穴埋めにここにも置いてみることにします。

 しかし、『へうげ』は情報量が異常に多いのに、800字ってのは短いですなー。ホントにワンイシューしか書き込むことができない絞られっぷりには少し残念感も否めません。
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ダール・イ・レゼベールについて

そういえば、ブログとかに書いたつもりで書いてなかった、と思うことがよくあるので、せっかくなので今ここに書いておきます。

へうげの作中、ダール・イ・レゼベールにはギブ・アンド・テイクというルビが振られていて、何でギブ・アンド・テイクで愛なの?と思った人もいるかもしれません。山田先生がどのような意図でこうしたのか、あるいは実は意図せずこうなってしまったのかとかはよく分かりませんが……

レゼベールはポルトガル語ですが、ラテン系言語では、スペイン語などで言うと一番分かりやすいでしょう。スペイン語ではレシビールとなります。何か語感が似た単語を英語で連想してみて下さい。

結論から言えば、ダール・イ・レゼベールは、英語に直せばギブ・アンド・レシーブです。

「与えて(与えるが)、取っていく」というギブ・アンド・テイクに比べて、こちらなら大分納得しやすいでしょう。「与えて、受けとる」。つまり、「与え合う」という相互性が愛なわけです。

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 コメントへの返信が大体遅れておりまして失礼しておりますが、おそらく質問等は、twitterの方でしていただいた方が短時間で認知できる確実性が高いかと思います(右カラム参照)。

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