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カーストとマルキオン教 

 私は現実宗教・宗教史については多少知っているけれど、グローランサについては一般教養レベルでしかものを知らないという手合いなので、資料閲覧や読み込みの不足、あるいは先達が漏らす断片的な情報を、現実宗教知識からの援用によって体系立てて把握しようとする、というのが常なる姿勢になります。それで足りなくなると、グローランサの専門知を持つ先達に頼って細かい情報を求めるというような次第になるわけです。


 以下マルキオン教について思ったことを徒然。



 私の把握している限りでは、マルキオン教には以下のような形で「カースト」システムが存在します。

 それは社会階層区分であり……そして同時に、マルキオン教における救済原理と不可分なものとして一体となっており、カーストの義務に従うこと、カーストに相応しく生きることによって、《慰め》といった救済を得ることができる、とされる。

 この階層構造はマルキオンの始原律法に由来するものであり(ブリソス社会にも存在することから)、かつその後のマルキオンやフレストルによる「改革」によっても覆されることなく継続し、マルキオン主義諸派は基本的にこれを原則として受け入れている(カースト移動を認める宗派はあってもカーストのない宗派はない)。

 そして、まだこれはグレッギングで消滅したりはしていないようである、と。私の目に霞がかって見えるのが、この「カーストシステム」なのです。






 よく知られていることでしょうが、カーストというのはインドの宗教・法慣習に由来するシステム。マルキオン教は一般に「キリスト教のようなもの」「キリスト教を元にした設定」と認識されているようですが、カーストシステムのようなものは、ヘブライズム三教からはちょっと説明することができないものです。

 というのも、ヘブライズム三教――つまりユダヤ教、キリスト教、イスラム教には、原理として信徒間の平等、神の前での等価が存在するからです。マルキオン教のカーストシステムは、ありていに言えばこれと相反しています。

 無論、どの(宗教)文化にも「特別な人間」は存在しています。預言者やら聖人やらの個人あり、また、ユダヤ教にも祭司、レビ人がいます。しかし、これらは聖俗の職責を分かつものであって、いわゆる(近代から見て)俗的な領域を分割しているわけではありません。俗的社会階層は、聖俗とは別個に存在するのです(含まれる人間が重複していることがあるのも一般的であるが)。

 また、人類文化のほとんどに、王侯あり、知識層あり、賎民があります。しかし、これらは教理、あるいは何かしらの根本概念から論理によって導かれている構造ではなく、マルキオン教にあるような「基本的救済原理と結びついた社会階層分化」ではありません。

 マルキオン教のカースト原理は、例えばキリスト教の社会分化理論――「召命」の理論であるとか、「清貧―施し」の美徳喚起理論とか、皇帝や教会の長による家父長的支配――では説明できないのです。


宗教的・神話的原理で社会階層の分割を規定しているのは、ある種インド・ヨーロッパ語族の文化特有の様態にも思われる。これは祭司・戦士・農工商といった類いの「階層」を意図して言っているのであって、「この神を起源とする氏族はどれどれの職能を代々担う」といった形式はこれに含めずに考えている。






 では何なら説明できるのかと言うと、簡単な話で、カーストという単語の起源でもあるインド宗教に他なりません。神教的な形でいいならば他の形でも構わないのですが、それだと論理と法則の宗教たる部分と齟齬を起こします。マルキオン教はキリスト教的な装いをしていますが、その中身は上層にヘレニズム哲学(これはヘブライズム各教派でも同じことですが)、下層にヒンドゥー教的カースト思想、といった構成になっている、と言っていいでしょう。

 実のところ、これはなかなか相性がいい組み合わせです。乱暴に言うと、ネオプラトニズム辺りで極まった「第一原理(ここでは差し当たり、一者 to Hen でも第一動因 Primus Motor でもいいのですが)を基点とし、世界を体系的で精緻な存在階層に分化して捉えるコスモロジー」があるわけですが、その第一原理や体系・法則を根幹に持つ宗教は(例えば、見えざる――観測できない、質料のない――神と、魔道の宗教などは)当然、人間社会も体系的に、システマチックに階層化して捉えることでしょう。ここにカーストが適合するわけです。


 ヒンドゥー教(あるいはインド宗教伝統)では、これが輪廻思想と組み合わさって、二重の救済構造が述べられます。まず、マルキオン教同様に、義務を正しく履行する者は不死の状態に到達する――輪廻から解脱する、という救済論。そして、ヴァルナ(カースト)に相応しく生きることによる人生毎のヴァルナ上昇(そして悪く生きたことによるヴァルナ下降)論。

 後者について補足すれば、ブラーフマナ(バラモン)に近しくなる程に、(例えば、義務への)知識、あるいは知るということについての親和性が高まりますので、やはり解脱により近づくという構造には違いありません。義務に叶った完全な生は解脱に直結し、解脱するほどではないが相応しい生には、より完全な生に近い立場を報償として受ける、という感じでしょうか。


 インド宗教の具体的な状況はさておき、このような(=システマチックに階層化して捉える)世界観では、各階層には各階層に固有の役割、テーマ、責務といったものが想定されるのが分かるでしょう(それこそ、ヒンドゥーのジャーティのように)。世界に存在をはじめるのは、世界の中の特定の位置を占めるためである……カースト制が救済論と結びつくのは、ここにおいてに他なりません。(位置を占める)そのために生きることに価値が見出され、それが救済を受ける資格となる、と。






 さてここで問題になるのが、「カーストに相応しく生きるとはどういうことか」ということです。救済と直結した構造であるからには、何が根拠付けたのか、何が創始したのか、どういう有り様できたのか、変遷は。と、こういったことについて説明する、あるいは説明している何かを設定するべきでしょう。私がマルキオン教におけるカーストをあげつらっているのは何故かというと、単純な話、そこができていないように見えるからです。

 ぶっちゃけて言えば、ヒンドゥーで言うダルマ・シャーストラ、例えば『マヌ法典』みたいなのがあるべきだと、そういう話です。ヘブライズムをモデルに取るならば、クルアーンに含まれる法規定、あるいはユダヤ法のようなものが。しかし、どうもないみたいなんですよねこういうの……『The Abiding Book』にもそういう内容は含まれていないようだし。

(先達にカーストの神学的根拠ないし、それについてゲーム内世界で語っていると思われる設定について尋ねてみたところ、「カルトブックに載っているから、以上」というような回答をいただきました。確かにまあ、カルトブックには、先述したような一般論が一文触れられていますが……)






 グローランサについての語りが、ヒーロークエスターのような物語の上層を主眼になることは肯定されると言ってもいいですから、別に「マルキオン教神学の詳細について」なんていう設定が出ないこと自体には何も問題がないのです。しかし「それについて語っている何か」は設定しておいた方がいいでしょうし、また、既にある「それについて当然語っているだろうもの」についての説明でこれをスルーするのは如何なものかと。

 と言っておいてなんですが、多分、グレッグとその周りに、これが書ける人・思い至れる人がいないんでしょうね……関心(≒能力)的に。これが、というのは、必ずしもカーストの話ではなくて、マルキオン教における教徒空間のあり方、という話ですけれども。

 文化人類学(グレッグを意識して言えば、や、神話学)といった方面の教育を受けた人はキリスト教をよく知らず、キリスト教をよく知っている人というのはもっぱら神学や教会史しか知らないという(前者系の学問が、そもそも植民地研究からはじまっているためですが)。マルキオン教がもっぱら「魔道の宗教」「魔道士の宗教」にしか見えないのも、これが原因だと思います。






 この辺で切りますが、「いや、その設定は語られてるよ」などということがありましたらお教えくだされば幸いです。
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コメント

現実の社会や宗教と類似させ過ぎないようにするためか、面白さのためか色々と混ぜているようで、おっしゃるようにマルキオン教にはネオプラトニズやグノーシス主義などを強く影響させているように見えます。

現在グローランサ西方文化に一番詳しい資料は Unfinished Work の Revealed Mythologies ですが、そこには創設者マルキオンが市民を四つのクラスに分類したという「神話」はあるのですが神学的な意味は載ってないようですね。

永遠の書には「マルキオンが王に教えたこと」、「マルキオンが兵士に教えたこと」、「マルキオンが農夫の教えたこと」、「マルキオンが魔道師に教えたこと」という内容が含まれているとのことなので法典化はされているのではないかと思います。

既にドラフトまで完成しているとい伝えられる HeroQuest の西方サプリ(2冊)が出版されればその辺のことについてもうもう少し詳しい情報があわかるかもしれませんね。

おお、割りと根底に近い部分の認識があっさり覆されたw

起源(神話)が明言されていたとは素晴らしい。お教え下さったことで、したり顔で「何が問題か」なんてあげつらっていた部分は概ね解決されました。無知は晒してみるものですね、ありがとうございます。


そういえばお尋ねした方も「Revealed Mythologies は読んでない」というようなことを言っていた気がしますので、補完する意味でも、どんなものか調べて読んでおいた方がよかったですね……言い訳しますと、尋ねてから書くまでに間が空いたもので、頭から抜け落ちていたようです。書こうと思った時にイサリーズの商品はチェックしたんですが
http://www.glorantha.com/products/
をざっと見ただけで、ここには並んでないし、さらにこのリストに西方文化に詳しいっぽいものがなかった関係で感触調べが終わってしまっていました。

http://www.glorantha.com/products/3006.html
なるほど、こういうのがあったのか……


そんな状態でなんで「なさそう」とか言ったかと申しますと、イサリーズのライブラリーの「The Abiding Book」を読んでのことです。
http://www.glorantha.com/greg/abidingBook.html
本文に書いたように、カーストは救済に直結する重要な要素だと考えた関係で、カーストに繋がるような要素が触れられていないのを見てそう判断しました。まあ、結局は古い文書だと言えばそれまでですね。

Revealed Mythologies は Pre-finished Work というだけあって難解だったり内容的に物足りない部分があったりして悩ましいんですよね。

件のカーストに関してもマルキオンが4つのクラスに分けたこと、それぞれ最初のリーダーの名前を元にカーストの名前が決まったことのみが書かれていて何故に分けたのかは書かれていませんし。

Abiding Book に関してもその目次が提示されているだけなので、各クラスの正しい有り方について何か書かれているはずとは分っても、実際に生き方がどのように規定されているかは全く不明ですし。

個人的には見えざる神を信仰していないブリソスの文化でも4カースト制が存在することなどより一神教的な救済理念には直接関係なくて、グローランサ西方の文化背景(アーリア文化に見られる職能分類のような何か)なのかもとか考えています。

グレッグの中での西方の優先順位の低さが伺われますねw
ドラゴンパス社会の方では、相当する情報が出されてますし。

>>最終段を中心に
ええと、お話を聞いて思ったことを書き並べたらちょっと長くなりましたので別稿にて。

極論を述べると、グローランサは「原インド・ヨーロッパ語族系民族に関する文化人類学」のみを扱う世界。

傍証は枚挙にいとまがないのだが、例えば“シャーマン”という用語を常に脱魂型にのみ用い、憑依型に対しては用いない(※)。同様、“自然崇拝”に際して用いられる“自然”という概念は、常に Natura、即ち“反人間”としての意味を持って表示されている。

なので、そういった原インド・ヨーロッパ語族系民族の記号(ヴァルナ制など)は、別にマルキオン教に限らず頻出する。例えば、イェルム神殿は大神級神性として、

 ・ダーゼイター/バラモン
 ・アラツ/クシャトリア
 ・ロウドリル/ヴァイシャ

という神性が存在し、各々が下位神殿を形成している。

なので、グローランサ設定のバイアスは特にマルキオン教だけに視られる現象でもないのですな。

※……シャーマンが常に fetch/fylja 持ちと構成的に定義され、さらに憑依型精霊崇拝の通俗的意味でのシャーマンに分類されるキャラクター(〔“大地の魔女”セルドロドーサ〕)対して、メカニズムで明白に「シャーマンではない」と規定した箇所がある。
  • [2008/12/18 22:42]
  • URL |
  • 匿名血族.S にいさま
  • [ 編集 ]
  • TOP ▲

>>極論
納得が深まりました。本記事にある私の基本的疑念は、主に

「グローランサの基層を作っている人間は専ら西欧内的な文化人類学/神話学といった分野に詳しい人間だが、西方の具体的な設定の作成に携わっているのは、専らヘレニズム哲学やそこから来るキリスト教神学、また教会史にのみ詳しい人間であり(両者の持つ知識分野にはズレがある)、前者にとって西方の優先順位は低い。このような状況が、マルキオン教あるいはマルキオン主義に関連する諸宗派のコスモロジーにおける、人類学が対象にするような民衆のあり方の不明瞭さを生んでいる」

という部分ですので。

話は少し変わりますが、マルキオン教にグノーシス主義を強く影響させている、という言説に以前から違和感を持っておりまして、噂の「The World of Glorantha」ML を覗いて件の「Gnosticism in Glorantha」のツリーを読んでみたのですが。
(ここにurlを書いていたのですが、どうも自分で設定してない禁止ワードに引っかかる模様。おそらくyahoogroupsのurlがスパム関連で弾かれているようです)
質問者に対して回答しているのがお三方いて、グノーシスについて一定以上の理解を持っていそうなのがPeter Metcalfe氏だけ。で、グレッグと同じ意見というJeff Richard氏は持っていない側に入っているのを見て、上の疑念についての信度が強まりました。

でまあ、「これこれがあるべきじゃないのかなぁ。この資料ではスルーされてるような空気だけど、どうなのよそれは」と言ってみたところ、「わずかだけど、ちゃんとこれに示されてるよ。多分これから補完されるよ。多分」と教えていただいたので、概ね解決という発言に至った次第です。


>>マルキオン教だけに視られる現象でもない
はい。そこを特にマルキオン教について取り上げたのは、それがアリストテレス的世界観……と言いますか、一神教と結びついたヘレニックな世界観と一体になっていたところに面白さを感じたからです。つまり、現実の西欧世界にあったような、合成・共存・抱合・制圧の結果ではなさそうなところに。4節1段で「神教的な形でいいならば他の形でも構わない~」などと言っておりますが、この「他の形」は、今回の関心の範囲から外れていました。

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laevaと名乗っていましたが、呼ばれる際に恥ずかしいという問題が発覚して以来、にるば(nirva)と名乗ってます。RPG、ボードゲームなどが趣味。
 
 コメントへの返信が大体遅れておりまして失礼しておりますが、おそらく質問等は、twitterの方でしていただいた方が短時間で認知できる確実性が高いかと思います(右カラム参照)。

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