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文字と官僚と魔術的職掌 

 『蒼き月の囁き』様の「グローランサの識字率再び」のコメント欄に勝手に蛇足な補足(なゆた氏の記事に直接関係ないので自分のところでひっそりと)。引用については、段落系など勝手にいじらせていただいてます。

Vampire.S にいさま 2008/09/25 21:29
ちなみに、
 ・文字はあるんだけど、魔術としてしか認識できない
 ・官僚機構は既に発達している
という状況の現実例としては、中国の周王朝(春秋時代より前)ですね。

Epikt 2008/09/25 21:37
>中国の周王朝(春秋時代より前)
殷と周の初期だと文字はほとんど記号扱いで文章ではないのでは。その場合、官僚機構と文字の関係はあまり無いように思えます。

Vampire.S にいさま 2008/09/25 23:03
>殷と周の初期だと文字はほとんど記号扱いで文章ではないのでは。
うーんと、既に文章にはなっています。「何年何月何日に以下のような経緯で以下のことが起こった。以上を記録する」とちゃんと書いてあるので。
ただ、"官僚"、即ち文書行政を行う人物がちゃんと成立したのは仰るとおり、春秋時代以降ですね。ただ、当時もいわゆる役人みたいな職はあったので(魔術技官みたいな感じだけど)、前述の表現をしました。そういう意味で、一番適当な場面は各金文と侯馬盟書の間の期間なのかな。

 ぶっちゃけると、以下の文字起源説は基本的に白川静説の受け売りですが、白川氏の本をまっとうに読んだことはないので不正確なところや白川氏の論と違ってるところがあったら私のせいです。



 まず、基本的に文字はまとめて一揃えに作られるものと思われます。つまり、散発的に発明された記号が寄り集まって文字体系が成立したということはなく、少なくとも文字の創造時に体系が存在した……基本的な部分ははじめから体系的に作られた、ということです。まあ、そうでなければ単なる記号群であって、「文字」として使えませんよね。

 周知の通り、最古級国家の例に漏れず殷王朝は祭政一致だったわけですが、殷にはその体制内官僚として卜占を取り扱う職能集団がいたと思われます。代々の王ごとに官僚としての祭司団が丸代わりすることもあって、彼らが固有の氏族を形成していたかは定かではありませんが、少なくとも彼らが共通の思想的基盤、卜占の概念・技術体系を持っていたとは推察していいでしょう。端的に言いますと、おそらくこの集団が一般的な事物、また儀礼に関わる氏族・職能集団を表す図象を元にして文字(漢字)を作り出した、というのが白川説です。

 上述の祭司団が丸代わりするというのは、大統領交代に伴うアメリカの官僚の総入れ替えみたいなものと言えば分かりやすいかもしれません。上の実際に神祇を担当する者(貞人)から、末端の書記官まで入れ替わるのですが、この書記官陣の癖によって書体どころか文法まで変動したりしているので、最古の文書群である甲骨文(祭事=政事の内容記録が主)の時代判定の材料に使われたりします。文字運用の在り方に対する彼らの影響力を示す一端と言えるでしょう。






 というわけで、「官僚機構と文字の関係」はガチで存在したと思われ、「文字はあるんだけど、魔術(の一環)として認識されていた」だろう状況があったわけです。何せ文書行政の主体は彼ら祭司団でしたから。

 祭事と政事の区別がない時空では、官僚(government official)が魔術的職掌に属すことは多々あります。例えば古代エジプトがそうで、エジプトの文字史についてもおそらく、先段の白川説と同じようなことが言えるのではないかなどと思っています……まあ、楔形文字という外的先例があったからには、全く同じではなかったでしょうが(「世俗的」な発起理由があった可能性は高い)。

 魔術的意味合いという視点で言えば、この性質は周(前期)より殷の方が遥かに強いので、残っている文書史料(殷後半からは金文)も周より殷の方が多かったりもします。そういう意味では「~~という状況の現実例」としてはむしろ殷なのかもしれません。






 書きながら思ったけど、大いにグローランサの参考になるなぁ。ガチで。文字は神に由来するものって言えば体系的な形での文字創造は容易に説明がつくし、んで文字運用と識字教育がカルト秘儀に属していると。
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コメント

ふむふむなるほどー
知見がないので自分のトコのコメ欄だと触れるのがはばかられたんですが、とても参考になります。
グローランサでも官僚機構を担うカルトがいれかわったりすると、読めなくなったり解釈が変わる文献もある、と。

卜占を主業務にする神巫集団を官僚と考えるのは抵抗があります。まあ卜占の結果に恣意が入ると、人間による政治なわけですけど。

新しい文字と書式による行政の統合というと、まさにルナー帝国がやってることですね。

>>なゆたさん

あー、多分これはことわっておかなくてはならないかと思うのですが、「書体どころか文法まで変動したり」という表現に「言語として丸変わり」したような勢いをお感じになったとしたら、すいませんちょっとセンセーショナリズムが入っていたかもしれません。
要は、彼らの筆先三寸が時代時代の文字表象を代表したのだ、ということを強調したかっただけでして、言語・文字体系としては同じ基本が守られています。文法と言っても、助字の使い方や、各文字がどのような品詞、格として使われていたかが変わった程度だと思います。ぶっちゃけ詳しくないんで、この辺りは曖昧ですが……

それはそれとして、カルトが入れ替わると同じ文献の解釈が変わる可能性とかは面白くていいですね。問題は、識字をどこまで魔術的なものと見なすか、ですが……w。つまり、魔術と表現するほどの技法なのか、という話で、カルト外の者と意味を共有できなくなりそうですからね。あるいは、魔術による文字解読の結果と、カルト外の人間による記号把握とが必ずしも一致しないとかいうパターンもあるのかも。


>>Epiktさん

その感覚は現代日本インテリゲンツィァ特有の風土病によるものですね。病名は「政教分離」です。

というような弄言はさておいて。

近代政治・官僚制をそれ以外の時代の官吏像に投影しようとするのはアナクロニズムだと思いますが、ともあれ「国策決定の根幹を担う体制内の組織的集団(固定官職とその下の書記官団)」を官僚と表現することに、私は特に抵抗を感じません。なお、どうも殷ではこういった側面以外の事柄については官職を組織的に運用するといったことはなかったようです。

私の脳内参考文献は以下の通り:

http://www.amazon.co.jp/%E3%82%88%E3%81%BF%E3%81%8C%E3%81%88%E3%82%8B%E6%96%87%E5%AD%97%E3%81%A8%E5%91%AA%E8%A1%93%E3%81%AE%E5%B8%9D%E5%9B%BD%E2%80%95%E5%8F%A4%E4%BB%A3%E6%AE%B7%E5%91%A8%E7%8E%8B%E6%9C%9D%E3%81%AE%E7%B4%A0%E9%A1%94-%E4%B8%AD%E5%85%AC%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E5%B9%B3%E3%80%93-%E9%9A%86%E9%83%8E/dp/4121015932

問題は、白川説の直接の系譜に属するので、Laeva氏の意見と同じ内容に過ぎないことか。

あと、殷を例に出さず、周にした理由は、

 ・卜占は殷という都市国家に閉じて、政治上の通時・歴史的記録を残しているいるが、
 ・金文は複数の都市国家間に渡って空間・共時的記録の伝搬に関与(しかる後に現場にて行政結果を保存=公文書としての役割が強い)している

ため、より『文字と行政』というトピックに合致していると考えたためです。
  • [2008/09/26 22:58]
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  • 匿名血族.Sにいさま
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>カルトが入れ替わると同じ文献の解釈が変わる

つ『今文vs古文』

孤立語表示でありながら句読点が存在しないため、漢文は同一のテキストに対して複数の形態素解析余地があります。

それを恣意的に決定することで、同一テキストを異なった意味で読ませることが可能だったり。そのため、各経書の「読み」は互いに排他的な学派を為し、その闘争の結果として例えば偽作文書の出現があったりします。
  • [2008/09/26 23:03]
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  • 匿名血族.Sにいさま
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グローランサの例で言うと、一神教が定義として神話を文書で残すので、この辺の話題が概ね入っています。『不変の書』の魔道書としての起動方法発見とか。
  • [2008/09/26 23:27]
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  • 匿名血族.Sにいさま
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>>参考文献

私としては、別段唐突な衒学がしたかったわけではなく(勝手ながら)「補足」という基本姿勢で書いていましたので、同様の基盤から言を発せていたのが確認できて問題どころか安心しました。


>>殷と周

その上で私がむしろ殷とか言い出した理由は、グローランサ周囲から発した話題ということで「魔術としてしか認識できない」を重視したのと(殷後期~周と「世俗」化が進みますし)、あと多分宗教史プロパーという個人的基盤のせいですかね……
「文字と行政」という視点で、周の方が提示する妥当性が高いのには同意。


>>『今文vs古文』

なるほど!

文字列「EWF」を巡る経緯を思い起こせば、西洋(←イラン以西をザッと想定している)ファンタジー世界でも同じ問題を容易に起こせそうですね。EWFを例に出したのは、単にグロランでの具体的な文字体系を察せそうな情報をそれしか知らないからです。
これ同様に頭文字だけを使った文字列の訓詁闘争を持ってくるのもいいですが、子音表記がないアルファベット系文字の文書を例に持ってくるのもと楽そうです。自分として具体的には、ヘブライ聖書/タルムードを巡る訓詁議論が思い出されていました。

ルナーでは文字体系どうなってるのか……楔形文字を使ってるオリエント諸帝国をそのまま類比に使ってよければ面白いんですけどね。実はグロランの「魔術ですから」と言って人間・文化の類比に圧倒的な留保を置くところが好きではありません。
『不変の書』周りは如何にもグロランらしいです。

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 コメントへの返信が大体遅れておりまして失礼しておりますが、おそらく質問等は、twitterの方でしていただいた方が短時間で認知できる確実性が高いかと思います(右カラム参照)。

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