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電子マネーと「キャッシュ」の並立:前編 

 ブラウザのキャッシュを空にしていたら、N◎VAの「キャッシュ」、ひいてはN◎VAじゃない「キャッシュ」についてつらつらと書きたくなった昨今です。

 ……妙に時間をかけてしまった。
サイバーパンク、3つの例における「電子マネー/キャッシュ両立体制」

 キャッシュについてはN◎VA-Dのp.29、p.133などに記載されています。N◎VAの背景世界、ニューロエイジは金銭が完全に電子情報と化してしまっている時代です。そしてその一方で、当局に金銭の流れを追われないために、裏社会などで却ってローテクな形の金銭の需要が高まったわけですな。そこで今我々が見知っているような通貨よろしく(キャッシュとは即ち「現金」という意味)、使い捨ての金銭データが入ったプリペイドカード、通称「キャッシュ」が出回ることになったわけです。

 以下、本稿では上のような目的に使われる通貨・現金的存在を「キャッシュ」と総称することにします。

 かつて日本語化された『シャドウラン』を遊んだ人にとっては、「支払い保証済みクレッド・スティック」という名の方が親しみ深いでしょうか。また、サイバーパンクの創始者であるギブスンの作品中では(少なくとも長編第2作の『カウント・ゼロ』の時点では)同じ機能の金銭が「新円(ニューエン)の札束」という形で登場していますね(電子マネーはクレディット・チップ、バンク・チップという形で管理されている)。


 ……札束。札束?



札束

 札束か。あらためて文章化してみると、CDな響きですね。と言ってもまあ、我々が現在使っている紙幣なんてものは(特に、通貨制度が管理通貨制度な現在では)言わば「支払い保証済み紙」と言うべきものですし、これら三者(キャッシュ、支払い保証済みクレッド・スティック、札束)は容易に同じ機能を持っている、と言うことができるものです。

 そもそも現実に「アングラな目的においては、銀行振込では痕跡が残るので現金が使われる」という話があるからこそ、物語にその変形ネタが使われるのでしょうからね。まあ、実情が一般に露出することは少ないために物語が先行している、という風があるのが、実情を見えにくくしているきらいはあります。現実における「キャッシュ」としての現金の使用例を、後ほど見てみることにしましょう(アングラじゃない公然な例を)。


 さしあたっては、「何故札束なのか」という問題について関心が向いたのでそっちをつっついてみます。



ギブスンとプリペイドICカード

 何故札束なのか。使い捨て・プリペイドのICカードなら『ニューロマンサー』が出た1984年の時点で、すでに出回っていた筈なのですが(磁気テレホンカードなら日本で82年末に、フランス等で83年にICテレホンカードが作られた)。

 まあ、テレホンカードを見て「これが将来には通貨のように使われ得るであるのを、何故見抜けなかったのか」とか言うのは愚かな非難ですし、そもそも83・84年の時点でアメリカ辺りには出回り出してたかな一般民生用ICカード。Wikipediaにでも頼りますか。

 → 米Wikipedia:Smart card
 → 米Wikipedia:Telephonecard

ぬう。分からん。まあ、この辺 ──

 → アメリカ合衆国の公衆電話事情 通信網
 → 電話事情 - USA Tourist

── によれば、アメリカでのテレホンカードの歴史は浅く、普及度はあまりよくないとのことなので(前者は01年のことだそうですが、問題にはならない)、磁気カードさえ出回っていないようなのにICテレホンカードが84年当時に出回っていたとは考えづらいでしょうね。「通貨と見做せるICカード」が一般に流通する余地はそうなかった、と思われます。

 しかもギブスンは若かりし作家だった頃、カナダ住まいでしたし(流石にカナダがこの辺で先行していたとは思えん……)、『ニューロマンサー』の時でもまだコンピュータに触ったこともなく、想像力で書き上げたそうですからね彼は。ギブスンの作品に「支払い保証済み与信素子(クレディット・チップ)」が登場しなかったのもむべなるかな、です。



実際どうなんでしょうね?

 まあ、最初の作品で云々言うより、最新の作品を追う方が建設的だし、本気で知りたくなったなら公式ディスカッションボード辺りで当人に尋ねてみるのがいいんでしょうが、それはそれとして、ちょっと触り程度に見てみますか。

 知っていて、あるいは思いついていて敢えて書かなかった、というのは十分ありえる話です。読者が親しんでいる札束を出すことによって、電子マネーとの対比を強調する。演出としては様々に効果が望めます。


 第一、現実という背景にモデルが存在してなくても、先行SF作品に既に登場していたかもしれませんしね。



先行SFをちょっと見てみる

 SFは私の畑ではないのであまり確ということは言えないのですが、とりあえずこの時代までのアシモフ宇宙とハインライン宇宙とフレデリック・ポール宇宙とハーラン・エリスン宇宙には存在していないようです(注:各数作しか調べられてませんけれど)。

 いや、なくはないんですけれどもね、現金を表すのであろう、紙幣や硬貨でない通貨らしきものは。定番の「クレジット」とか……あれは一体何でできているんだろうか(無論作品ごとに違おうが)。



蛇足の結→転

 第一、この頃の作品にはそもそも「電子マネー/キャッシュ両立体制」がなくて、電子マネーの概念さえあるかなしか。紙幣も度々出てきますしね。ちょっと後退して、電子マネーという観点からものを見てみましょうか。実のところ本記事1行目のテーマにとって、「札束」という形にさほど重要性はありませんしね。

 ここでは、「ギブスンは何故『キャッシュ』に札束を使用したか」という問題への回答として、とりあえず、
「現実にモデルとなるようなものがなく、先行SFにも参考になるものがなかった、あるいはこれらがあっても、ギブスンはそれを知らなかった」
というレベルの仮説で満足しておきます。

 身近にSF者がいないので、当人に尋ねる以外の方法で私がこれの検証を得る機会は、かなりの間ないでしょうが……誰かSF畑の人、検証してみると面白いかもしれませんよ。SF貨幣学を造ってみませんか?

(それとも実はもうあるんですかねぇ?先程ネット上でしばし探してみた限りだと、これに類する言論は見つかりませんでした……)



もっかい現実という背景:電子マネー

 アメリカの支払い取引は長らく伝統的な小切手取引で、振り込み取引などが行われるようになったのは他国に対してかなり遅いんですね(日欧では、60年代後半にはもう給料の自動振込や現金自動支払い機が使われ始めた模様)。

 振り込み取引の普及は70年前後にEFT(Electronic Fund Transfer、電子資金移動。特に銀行間の資金移動を指す)が導入されるようになってからということです。そしてこのような電子取引に関する法制が整えられたのは、83年になってからやっとのこと。



そして、SFへの反映の如何

 これらのことを考えると、70年代半ばにはもう電子マネーが電子マネーとしてSFに登場していてもよさそうだなぁ。50年代、60年代ならともかく。70年辺りと言えば、ARPANETの成立から間もなくのこと。この影響を受けたSF作品の嚆矢がフレデリック・ポールの『マン・プラス』だ、という認識は正しいんだろうか?

 『マン・プラス』に何が反映されているかというと、ネットワークによって繋がったコンピュータの綜合知性、という概念としてだけれど。この作品が金について特に触れるような内容じゃないのが残念です。どうやら現行同様の通貨を使っているように思われるのですが、作品の性質上、別に通貨に先進性を取り入れる必要がない(必要がないように背景調整したわけでもない背景)ので参考にならないのが残念。


 まあ、登場してもよさそう、とか言いつつ……一般社会レベルで考えると、金とネットが絡んでくるのは90年代に近づいてやっとのことで、コンピュータ間のネットワークなんぞ軍か大学かのものでしかなかったから「電子マネー」という発想が浮かばなくて当然と言えば当然なんですけれどね。

 作家層が、銀行のシステム周りから着想を得ることがあるのか?私には分からない問題です。第一、殊更に通貨関連の要素をSF分の強調に使用するか、という問題もありますし……クレジットカードやIDカードを合成したようなものの初出はどのような作品なのだろうか?ギブスン以前に存在したのか?


 生半可な調査で解ける問題でもなし、これ以上踏み込まないことにしますかねぇ。


 → 後編へ続く
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laevaと名乗っていましたが、呼ばれる際に恥ずかしいという問題が発覚して以来、にるば(nirva)と名乗ってます。RPG、ボードゲームなどが趣味。
 
 コメントへの返信が大体遅れておりまして失礼しておりますが、おそらく質問等は、twitterの方でしていただいた方が短時間で認知できる確実性が高いかと思います(右カラム参照)。

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